私が生まれて初めて聴いたクラシックコンサートは中村紘子さんなんだそうです。
まだ小学生で、35年以上前のはず、札幌の、ホールはどこだったんだろう、演目も覚えていませんが、母がそう言っていました。
私自身は親の事情でピアノのレッスンが続けられなくなり、
ピアノのことは子どものころの知識のまま止まってしまいましたし、
ピアニストは中村紘子さんしか知らないまま大人になってしまいました。
そんなふうに私から一方的に認識されていた中村紘子さんが、
エッセイの名手だと知ったのは、仕事をし始めてからです。
大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した「チャイコフスキー・コンクール」を読むとコンクールのこと、ピアニストなどの登場人物が、テンポよく生き生きと描かれ、少しぴりっとしたユーモアも交えて描かれるのが本当に見事でした。
「ピアニストという蛮族がいる」をもまた秀逸でした。
ホロヴィッツがあまりにも人間味あふれて描かれているので、
どんな演奏をするんだろうと、CDを買いに走ったことをよく覚えています。
そして、中村紘子さん最後のエッセイ集「ピアニストだって冒険する」が6/30に発売になりました。
私が初めて習ったピアノの先生に、
ピアノを弾くときは、生卵をやさしくにぎっているような手で弾いてね、
指を伸ばしたら卵がコロコロと転がって割れちゃうよ、
ぎゅっとにぎったら割れちゃうよ、やさしくやさしくまるい手でねと教わったのですが、このエッセイのなかにもそんなくだりが出てきました。
中村紘子さんもそうやって教わったのだと思うとうれしくなりました。
むかし流行っていたメソッドなのでしょうか。
追記
現在は文庫で入手可能です。
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